多汗症とは、異常な量の汗をかく状態を指します。
通常、汗は熱や運動に関連してかくものですが、多汗症では生理的に汗をかく状況ではなくても精神的な要因で多量に汗をかくようになります。多汗症には、全身に汗が増える全身多汗症と、腋や手など限定された場所のみに汗をかく局所多汗症に大別されます。
当院で診療する多汗症は、局所多汗症の手掌多汗症です。以下に手掌多汗症について説明いたします。
手掌多汗症とは
人間の発汗には、温熱性発汗、味覚性発汗、精神性発汗が存在します。手掌多汗症は精神性発汗に分類されます。
精神性発汗では交感神経が亢進し、興奮や緊張状態で手のひらに多くの発汗が生じるため、勉学、仕事などの日常生活に大きな支障をきたします。具体例としては、人に触れることができない、ピアノの鍵盤が濡れる、パソコンのキーボードが濡れる、ノートやテスト用紙が汗でびしょびしょになる、などです。
日中は交感神経が亢進していますが、交感神経の亢進状態がおさまっている睡眠から起床時は発汗が抑えられます。
2020年の全国調査では、多汗症有病率は10.9%で、このうち手掌多汗症は2.9%でピークは15歳〜29歳でした。このうち約10%が医療機関を受診していると報告しています。
手掌多汗症の診断基準
重症度の判定はStruttonらが自覚症状により以下の4段階に分類したHyperhidrosis disease severity scale (HDDS) を用いています。
(1)まったく気付かない、邪魔にならない。
(2)我慢できる、たまに邪魔になる。
(3)どうにか耐えられるが、しばしば邪魔になる。
(4)耐えがたい、いつも邪魔になる。
※このうち(3)、(4)を重症の指標にしている。
重症度の判定はStruttonらが自覚症状により以下の4段階に分類したHyperhidrosis disease severity scale (HDDS) を用いています。
全く気付かない、邪魔にならない。
我慢できるが、たまに邪魔になる。
どうにか耐えられるが、しばしば邪魔になる。
耐えがたい、いつも邪魔になる。
※このうち、3と4を重症の指標にしています。
また、実際の感じ方として、以下のレベル分類が存在します。
Level 1 見た目にはわかりにくく水滴ができるほどではないが、軽く湿り肌がテカって見える
Level 2 垂れるほどではないが、手のひらにできた水滴が見た目でわかる。
Level 3 手のひらに水滴ができ、垂れてくる。
※Level 3が重症にあたります。
しかし、手汗の多さ、感じ方は個人差があります。実際には十分に問診を行い、診察した段階で治療方針を決定します。
手掌多汗症の治療
手掌多汗症の治療には、内科的治療と外科的治療に大別されます。
内科的治療
当院では、以下の薬剤を採用しています。
■内服薬
プロバンサイン(空腹時に内服。全身の発汗、外分泌が抑制されるため、唾液や涙が減少することあり)
■外用薬
アポハイドローション(眠前に両手のひらに塗布。効果発現まで1ヶ月程度有する)
外科的治療
内科的治療に抵抗性の患者様や手術による胸部交感神経節切除を希望される患者様に対しては、胸腔鏡を使用した手術(ETS)を提示いたします。